「太っている人はいびきをかきやすい」というのはよく知られた話ですが、実は痩せている人でもいびきをかくことがあります。むしろ、「痩せているのにいびきをかいている」という場合は、別の原因が隠れている可能性があるため、注意が必要です。
痩せている人でもいびきをかく原因の1つに、もともとの気道の構造が狭い体質があります。これは先天的な要因で、太っていなくても以下のような特徴があると、いびきをかきやすくなります。
顎が小さい・後退している(下顎後退)
扁桃腺やアデノイドが大きい
鼻中隔の湾曲や鼻炎体質
これらの構造的な要因によって、空気の通り道が狭くなり、空気の流れが乱れていびきの原因となるのです。
特に痩せ型の女性や若年層で「顎が小さくて舌が収まりきらない」「鼻が詰まりやすい」といった体質を持っている人は、見た目には健康そうでも、いびきに悩むケースが多く報告されています。
もうひとつの大きな要因は、鼻呼吸がうまくできないことによる口呼吸です。鼻炎や花粉症、アレルギー性鼻炎などがあると、就寝中に自然と口が開き、喉の奥で空気が乱れ、いびきが発生しやすくなります。
痩せていても口呼吸をしていれば、いびきの発症リスクは高くなります。特に、以下のような状態は要注意です。
就寝中に口が開いている
起きたときに喉が乾燥している
日中も口呼吸の傾向がある
このように、体型がスリムでも気道が狭かったり、口呼吸になっていたりすると、いびきが発生するというわけです。つまり「太っていないから安心」というわけではないのです。
「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は、一般的には肥満と関連が深い病気として知られていますが、痩せている人でも発症するケースは少なくありません。特に顎が小さい、または後退している痩せ型の人は、SASのリスクが高い傾向にあります。
これは、就寝中に舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を塞いでしまうためです。痩せていても、以下のような症状がある場合は**「隠れ無呼吸症候群」**の可能性を疑う必要があります。
就寝中に呼吸が止まる・むせる
起床時に頭痛や強い眠気がある
日中の集中力低下やイライラ感
熟睡感がない・何度も目が覚める
このような症状は、たとえ見た目が健康体でも脳と身体が慢性的な酸素不足にさらされているサインであり、放置すると高血圧や心疾患、うつ症状を引き起こすこともあります。
痩せ型でいびきをかく人に多いのが、骨格や顎の形に起因する気道の狭さです。とくに以下のような特徴を持つ人は、いびきが出やすい傾向にあります。
下顎が小さい・後ろに引っ込んでいる
顔が細長く、上気道(鼻から喉まで)が狭い
舌が大きい、または舌の付け根が下がっている
このような状態では、寝ている間に舌が後方に沈み込み、喉の奥を塞ぐことでいびきや無呼吸を引き起こします。また、痩せ型の人は筋肉量が少ないため、喉周りの筋肉の張りが弱く、気道が閉じやすいという特徴もあります。
さらに、歯並びが悪い、顎の関節がズレているといった問題もマウスピースの効果が出にくい原因になることがあります。
このような骨格的な問題は、見た目だけでは分かりにくいため、「痩せている=健康」と自己判断せず、専門の医師に相談することが重要です。
が喉の奥に落ちやすくなるため、横向き寝に切り替えるだけでいびきが軽減されるケースも少なくありません。
枕も重要です。高すぎる枕は首を圧迫し、気道を狭くしてしまいますし、低すぎると舌の沈下を招きやすくなります。理想的なのは、**首の自然なカーブを保てる高さ(おおよそ4〜6cm)**です。
以下のチェックポイントで枕を見直してみましょう:
チェック項目 | 対策ポイント |
---|---|
枕が高すぎる | 首を圧迫し気道が狭まる → 低めの枕に変更 |
枕が柔らかすぎる | 頭が沈み込みすぎる → 適度な反発力を持つものを選ぶ |
仰向けで寝ている | 横向き寝を試す → 抱き枕などを利用すると効果的 |
いびきの大きな原因の一つが口呼吸です。痩せている人でも、鼻詰まりや習慣的な口呼吸によっていびきをかくことがあります。そのため、就寝時に自然な鼻呼吸ができるような工夫が大切です。
対策例:
口テープ:寝る前に口に専用テープを貼って、口呼吸を防ぐ
鼻腔拡張テープ:鼻の通りを良くすることで鼻呼吸を促進
加湿器の使用:鼻や喉の乾燥を防ぎ、呼吸しやすい環境を整える
これらの対策は副作用が少なく、自宅で簡単に実践できるのがメリットです。ただし、重度の鼻詰まりがある場合は、耳鼻科での治療を優先しましょう。
痩せ型の人で軽度の睡眠時無呼吸やいびきが確認された場合には、**マウスピース(スリープスプリント)**の使用も有効です。これは下顎を前に出すことで、舌が喉に落ち込むのを防ぎ、気道を広げる仕組みです。
市販品でも一定の効果が期待できますが、歯科で作成されるオーダーメイドのマウスピースの方が高い効果と安全性を持ちます。
使用時の注意点:
歯並びが悪い場合は装着できないことがある
顎関節症の人は歯科医と要相談
最初は違和感があるが、数日で慣れることが多い
いびきの原因が明確であれば、道具に頼ることも立派なセルフケアの一つです。
生活習慣や枕・姿勢の改善、マウスピースなどの対策を講じても、いびきが改善されない場合、専門医による検査を受けることが重要です。とくに次のような症状がある場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性が高いため、早期の受診が推奨されます。
寝ている間に「呼吸が止まっている」と指摘された
毎朝頭が重い・疲れが取れない
昼間に強烈な眠気に襲われる
集中力が続かず、仕事や生活に支障がある
検査方法としては、自宅でできる簡易型の睡眠検査キットや、専門クリニックでの**ポリソムノグラフィー(PSG)**という詳細な検査があります。
また、いびきの原因が**気道の構造的な問題(鼻中隔湾曲、アデノイド肥大、扁桃腺の肥大など)**にある場合は、CTや内視鏡を用いた画像診断が有効です。これにより、痩せ型でも呼吸の妨げとなる解剖学的な問題が明らかになることがあります。
重度の睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、CPAP(シーパップ)療法が提案されることがあります。これは、鼻に装着したマスクから空気を送り続け、気道の閉塞を防ぐ治療法です。
ただし、「痩せている人で軽度〜中等度の症状」の場合には、CPAP以外の治療法も選択肢になります。
主な代替治療法:
治療法 | 内容 | 対象 |
---|---|---|
スリープスプリント | マウスピースで顎の位置を調整 | 軽度〜中等度SAS |
鼻腔手術・扁桃腺手術 | 気道の物理的拡張 | 解剖学的問題がある場合 |
舌筋トレーニング | 舌の筋力をつけて気道閉塞を防ぐ | 筋肉のゆるみが原因の場合 |
また、喫煙・飲酒・ストレス・寝具の不適合などの要因が複合的に関与しているケースも多いため、医師の指導のもとで総合的に対策を取ることが最も効果的です。
いびきの原因は人それぞれ異なり、痩せ型であることが一見リスクにならないように見えても、背後に深刻な病気が潜んでいることもあります。一度の検査が、あなたの健康を守る大きな手がかりになるかもしれません。
「いびき=太っている人の問題」というイメージは根強いですが、痩せている人でもいびきをかくことは十分にあり得ます。その原因の多くは、気道が狭い体質・骨格的な問題・鼻呼吸の障害・筋肉の緩みなど、体重とは無関係な構造や機能によるものです。
特に痩せ型で顎が小さい、または鼻づまりがある人は、見た目では健康に見えても気道が狭くなりやすく、睡眠時無呼吸症候群のリスクを抱えている可能性があります。
こうしたケースでは、いびきは単なる生活音ではなく、体の異常を知らせる重要なサインです。
枕や寝姿勢、口呼吸の対策、マウスピースの使用など、できる範囲のセルフケアを行いながらも、改善しない場合は専門医の診断を受けることが非常に重要です。
また、痩せ型でもCPAPや手術、舌筋トレーニングなど多様な治療法が存在しているため、体型にとらわれず、一人ひとりに合った対策が求められます。
「痩せてるから大丈夫」と安心せず、いびきの質や睡眠の質に注目することが、健康への第一歩です。
睡眠時無呼吸症候群について|厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187981.html
痩せている人の無呼吸症候群はなぜ起こる?|ナゾロジー
https://nazology.net/archives/121203
鼻づまりといびきの関係|日本耳鼻咽喉科学会
https://www.jibika.or.jp/citizens/disease/nose.html
睡眠医療Q&A:痩せ型でも無呼吸になるの?|日本睡眠学会
https://jssr.jp/data/pdf/sleep_apnea_faq.pdf